福島第一原発事故をめぐり東京電力が津波対策を怠ったとして、東電の株主が旧経営陣に22兆円の賠償を求めた訴訟が11月30日、東京地裁(朝倉佳秀裁判長)で結審した。旧経営陣の責任を問う民事裁判は2012年3月の提訴から約10年にわたる審理を終え、来年7月13日に判決が言い渡される見通し。
争点は①旧経営陣が津波の危険を認識できたか(結果予見の可能性)②防潮堤建設や浸水対策を講じられたか(結果回避の義務)――など。株主側と旧経営陣側は30日、最後の意見を法廷で改めて述べた。
他県に避難した原告の男性「どこで死ぬのか・・・」
原告の株主の弁護団は、東電側が国の地震予測「長期評価」にもとづき15・7メートルの津波を想定していたため「津波を予見できた」と指摘。設備への浸水を防ぐ「水密化」をすれば事故は防げたと主張した。
事故後に福島県から金沢市に避難した株主の浅田正文さん(80)は「終(つい)のすみかを失い、どこで死ぬのかとの思いが頭を離れない。事故が起きた責任は経営の誤りにある」と語った。
これに対し被告の旧経営陣側は、国の長期評価は「具体性がなく対策を講じるのは不可能だった」と反論した。長期評価の取り扱いを社外の専門組織に委ねた判断も「事故前の目線で見れば合理的だった」と訴えた。
旧経営陣のうち勝俣恒久・元会長ら3人は、ほぼ同じ争点で刑事責任も追及されている。業務上過失致死傷罪で強制起訴され、東京地裁は19年に無罪としたが、東京高裁で公判が継続中だ。今回の民事裁判は株主側が刑事裁判の証拠も検討すべきだと求め、審理が長期化していた。(村上友里、編集委員・佐々木英輔)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル